
「尿路結石症は頻度の高い疾患のひとつで、近年の医療技術の進歩により、 さまざまな治療法を選択することができるようになっています。 また再発しやすいことが知られています。 そこで、このガイドラインでは治療とともに再発の予防についても述べられています。
【1 治療ガイドライン】
要約すると、図1のようになります。

- 1.尿路結石症の初期の評価
- 病歴、身体所見、尿検査、単純X線撮影、腹部超音波断層法、末梢血液検査およびCRP、血液生化学検査(クレアチニン、尿酸、カルシウム、リン)。
- 2.疼痛に対する処置
- 尿路結石で疼痛を訴える患者さんに対しては、迅速に疼痛に対する処置を行う。非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の坐剤。 無効の時は、ペンタゾシンの筋注、その他、持続硬膜外麻酔。
- 3.結石の性状および閉塞状態の評価
- 尿路結石症と診断された患者さんに対して、結石の性状と閉塞の状況を評価する。超音波断層法、排泄性尿路造影。 その他必要があれば、X線CT、逆行性尿路造影、経皮的順行性尿路造影、腎シンチグラフィー、超音波カラードプラー法、MR尿路造影、など。
- 4.治療指針の推奨
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- 尿路結石症患者の治療法の選択にあたっては、医師は各治療法の得失に関する情報を患者に提供し、さらに結石以外の病態や社会的要因なども考慮して、患者さんと相談の上、治療法を決定する。
- 繰り返す疝痛発作、尿路感染の合併、持続する上部尿路閉塞(水腎症の存在)で腎機能の低下が懸念される場合には、適切な結石除去の方法を選択しなければならない。
- 高齢者の無症候性(症状のない)結石に対する治療は、その得失を慎重に考慮することが望まれる。
長径5mm以下の結石は、無治療で経過を観察することも可能である。
排石促進を目的とする種々の薬物療法。
閉塞を伴わない尿酸結石やシスチン結石に対しては結石溶解療法。 - 5.腎結石の積極的な治療法
- 現在では、開放手術は第1選択として適切ではない。
ESWLは第1選択として望ましい。
ESWLがうまくいかない結石に対しては、内視鏡的破砕(PNL、TUL)の併用が望ましい。 - 6.尿管結石の積極的な治療法
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- 上部尿管結石、腎盂尿管移行部結石
開放手術は第1選択とならない。
ESWLが第1選択である。
TUL、PNLも選択肢となる。 - 中部尿管結石
開放手術は第1選択とならない。
TULまたはESWLを第1選択とする。 - 下部尿管結石
開放手術は第1選択とならない。
長径10mm以上の結石にはTULが第1選択である。 ESWLの選択もありうる。
長径10mm未満の結石ではESWLまたはTULが第1選択である。
(治療法)
長径5mm以下の結石は、無治療で経過を観察することも可能である。
排石促進を目的とする種々の薬物療法。
閉塞を伴わない尿酸結石やシスチン結石に対しては結石溶解療法。
- 上部尿管結石、腎盂尿管移行部結石
- 7.珊瑚状結石の積極的治療
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- 専門医による診療が必要である。
- PNL、ESWL、TUL、PNLとESWLの併用療法、開放手術の各々の治療法につき、その有益性と危険性について十分な情報を提供する必要がある。 積極的治療が望まれる。
- 起炎菌の明らかな尿路感染があれば、積極的治療前に適切な化学療法を行う。
- PNLとESWLの併用療法が最も推奨される治療法である。
- ESWL単独治療や開放手術は第1選択にはならない。
- 小さな珊瑚状結石では、ESWL、TUL、PNLの各々の単独治療も選択肢となりうる。
- ESWL、TULおよびPNLを駆使しても治療困難な珊瑚状結石では、開放手術も選択肢となりうる。
- きわめて腎機能が悪化した患者では腎摘除術も選択肢となりうる。
- 長径20mm以上で珊瑚状結石でない腎結石治療についてもESWL、TUL、PNLの各々の単独治療が適応される。
2 再発予防ガイドライン
結石成分別に要約すると図2のようになります。

- 1.再発に対する診断
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- 基本的な項目
結石成分の分析、問診(家族歴、既往歴、現病歴、投与中の薬剤) - 血液、尿検査
- 血液生化学検査
血清クレアチニン、カルシウム、尿酸、できれば(血清アルブミン、カリウム、リン、PTH)
- 一般尿検査
試験紙による定性反応(蛋白、糖、pH)、尿沈渣、シスチン定性反応、尿細菌培養
- 24時間尿化学検査
クレアチニン、カルシウム、尿酸、尿量、蓚酸、クエン酸、できれば(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン、アミノ酸)
- 血液生化学検査
- 基本的な項目
- 2.再発に対する指導と薬物療法
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- 基本的な項目
飲水指導(食事以外に1日2000ml以上)、できれば食事指導(バランスのとれた食事が基本、栄養素摂取量の指導、食生活の指導) - 通院計画と経過観察法
定期的な通院- 腎結石がない場合
6ヶ月から1年毎の通院と尿検査
1年毎の超音波検査、X線検査(KUB)
- 腎結石を有する場合
3ヶ月から6ヶ月毎の通院と尿検査
6ヶ月毎の超音波検査、X線検査(KUB)
- 腎結石がない場合
- 基本的な項目
- 3.尿路結石の種類に応じた指導と薬物療法
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- 尿酸結石
飲水指導(1日尿量2000ml以上を維持)と食事指導
患者の状況に応じた適切な薬剤投与(尿pH6.0未満、高尿酸血症、高尿酸尿) - シスチン結石
飲水指導(1日尿量2500ml以上を維持)と食事指導
患者の状況に応じた適切な薬剤投与(尿アルカリ化剤の投与、チオプロニンの投与、
小児では飲水指導が中心だが可能なら内服も) - 感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム、カーボネートアパタイト)
飲水指導(1日尿量2000ml以上を維持)
尿路感染の原因精査、適切な薬剤の選択と投与)
1. 尿細菌培養による原因菌の同定
2. 感受性の高い抗生剤、抗菌剤の内服 - 蓚酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石
飲水指導(1日尿量2000ml以上を維持)
患者の状況に応じた適切な食事指導と薬剤投与 (高カルシウム尿、高尿酸尿、高蓚酸尿、低クエン酸尿)
- 尿酸結石