心房細動の治療は1.リズムに対する治療、2.血栓塞栓症の予防に別けらます。

1.リズムに対する治療
まずリズムに対する治療のガイドラインを紹介します。これは日本循環器学会が発表した「循環器病の診断と治療に関するガイドライン」の中の「不整脈薬物治療に関するガイドライン」に準拠しました。心房細動から正常の洞調律に戻すことを除細動といいます。除細動を行なう前には抗凝固療法・抗血小板療法をしなければなりません。つまり心臓の中に血栓がない状態で除細動を行なうことが大切です。
除細動の方法には、電気ショックを用いる方法と、抗不整脈薬を用いる方法の2つがあります。抗不整脈薬には多くの種類があり患者さんの病状によって使い分けられています。その使用法の詳細はあまりに専門的なのでここでは紹介していません。
2.血栓塞栓症の予防
心房細動でかつ、一過性脳虚血発作や脳梗塞の既往、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、心不全、弁膜症、加齢のいずれかを有する例では抗凝固療法または抗血小板療法をした方が良いとされます。
心房細動における抗凝固療法または抗血小板療法のガイドライン
クラスI | 1 一つ以上のリスクのある症例のワーファリン投与 |
2 リスクはないが、60歳以上の症例に対するワーファリン投与 | |
3 60~75歳の症例に対するアスピリン投与 | |
クラスIIa | 1 アスピリン投与禁忌症例に対するチクロピジンの投与 |
クラスIII | リスクのない60歳未満の症例に対する抗凝固・抗血小板療法 |
ここでのリスクとは以下をさす: 一過性脳虚血発作や脳梗塞の既往、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、うっ血性心不全、弁膜症 |
抗凝固療法はワーファリンという薬物を内服して行なわれます。ワーファリンは心臓や血管内で血液が固まるのを予防する薬剤で、心房細動以外にも心臓弁膜症、肺塞栓症や種々の血栓症、人工心臓弁などの血栓予防にも使われます。ワーファリンは心房細動による脳梗塞を約1/3に減らすといわれます。ワーファリンの効果を確認するために定期的にPT-INRという項目の採血を行なう必要があります。