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【はじめに】


腎不全と尿毒症

腎(臓)は、図1のように腹部背側に左右1側ずつあり、尿の生成、排泄を通して、体内老廃物の除去、体液の浸透圧の調節、電解質の調節、血液pHの調節、各種ホルモンの分泌を行う臓器です。
これらすべてを説明するにはかなりの長文となり、加えて一般の方には難解かと思われます。
したがって腎不全と尿毒症の意味を知る上では、腎における尿の生成の概略をご理解いただければ、腎の働きの低下した腎不全、更には尿毒症の大要をつかめて頂けるのではないかと考え、尿生成について簡略に記してみたいと思います。
腎における尿生成の最小単位はネフロンと言われるもので、1側腎に約100万のネフロンが含まれています。このネフロンとは、腎小体(糸球体とボーマンのう)と尿細管から成り、図2は腎小体です。

腎小体

各々のネフロンは図3のように集合管(1側腎で320本)に集められ、尿となって腎盂、尿管を通して膀胱に貯留され、尿道から排泄されます(図4)。
ネフロンの働きは、糸球体での濾過、尿細管における再吸収と排泄の3つに要約できます。
ネフロンでは、図2のように輸入細動脈から運ばれた血液が糸球体でボーマンのう内に濾過されます。この濾過は赤血球、白血球、血小板や蛋白質は濾過されずに輸出細動脈に出て、血漿のみが濾過されて尿細管へ向かいます。これが原尿です。
尿細管は、糸球体に近い部から近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管からなり、近位尿細管と遠位尿細管とを結ぶヘンレ係蹄と遠位尿細管の集合管側の一部(遠位尿細管上行脚の一部)が腎髄質に分布していて、他の部分はすべて腎皮質に分布しています(図3、図5)。
糸球体で濾過された原尿は、近位尿細管でブドウ糖、アミノ酸、ビタミンCなどの栄養物は100%再吸収され、水やナトリウムなどの電解質も約80%が再吸収されます。
ヘンレ係蹄ではカルシウムの再吸収と浸透圧を利用した尿の濃縮が行われます。
遠位尿細管では水やナトリウムなどの電解質の約19%が再吸収され、カリウムは再吸収と排泄が行われます。


したがって水や電解質はその99%が近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管から再吸収されて、残りの1%が集合管を経て尿となるにすぎません。
また腎に入る血流量は、腎動脈を通して毎分約1リットルという大量の血液です。
この尿生成などを行うことにより体内で種々の調節を行っている腎機能(腎の働き)が低下することにより起こる様々な変化が腎不全あるいは尿毒症です。

【どんな病気】

1.急性腎不全

糸球体濾過が急激に低下して、体内の老廃物が排泄されない状態を急性腎不全といいます。その原因により以下に3大別されます。

a. 腎前性腎不全
腎に流れる血液量が急激に減少したものです。
出血、火傷、外傷、脱水、敗血症、心筋梗塞、心不全、肝硬変、異型輸血その他による腎への血流量が急減した場合に生じます。
b. 腎性腎不全
腎自体にその機能を急激に低下させる病的な変化が生じて起きたものです。
急性腎虚血、薬物中毒などによる尿細管壊死(尿細管組織が死んだ状態)によるものが最も多く、多発性腎梗塞などによる腎皮質壊死、腎内動脈閉塞、痛風性腎症などによる尿細管閉塞、悪性高血圧による腎細動脈壊死、高カルシウム血症性腎症などによる急性間質性障害、急速糸球体腎炎、結節性多発性動脈炎による高度の糸球体病変その他が原因となります。
c. 腎後性腎不全
腎で尿が生成されていても、尿路(尿の通路)である腎盂から尿道に至る部位に尿の通過障害が生じて、乏尿あるいは無尿を起こすものです。
両側尿管結石、両側尿管腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺肥大症の末期その他の尿の通過が妨げられることにより生じます。

2.慢性腎不全

腎機能が回復し得ない進行性の障害の状態です。
前述したネフロン数が減少し、体内の老廃物の排泄が十分できなくなったものです。
その原因となる病気としては、糖尿病、糸球体腎炎が最も多く、他に慢性腎盂腎炎、先天性腎尿路奇形、痛風、ネフローゼ、妊娠中毒症、各種腎炎、腎硬化症、悪性高血圧その他です。

3.尿毒症

急性腎不全の場合は程度の差はあってもすでに尿毒症の状態にあり、慢性腎不全の末期状態にも表れ、腎機能が高度に悪化して生じる全身の重篤な変化を言います。

【どんな症状】

1.急性腎不全

24時間の尿量が500cc以下を乏尿、100cc以下を無尿と言いますが、この乏尿あるいは無尿を生じます。この乏尿ないし無尿は、腎障害が起こって24時間以内に生じます。
前述した腎前性、腎性、腎後性、また原因となった病変により随伴する症状は多少異なりますが、後述する尿毒症症状が起こります。

2.慢性腎不全

神経、精神症状として、不眠、頭痛、性格変化などが初期からあり、筋力低下や知覚異常を生じます。
循環器系症状としては、高血圧、貧血、カルシウム代謝障害によって心肥大、心膜炎、心筋炎、うっ血性心不全などが起こります。
造血器障害により、貧血、出血傾向、血小板機能低下、血管内の血液凝固が生じ易くなります。また過度の食事制限による蛋白質やビタミン類欠乏による多様な症状が起こります。
カルシウム、リン、骨代謝異常により低カルシウム血症、高リン血症が起こります。
消化器症状としては、口臭、食欲低下、悪心、嘔吐が多くみられ、消化管潰瘍の頻度も高まります。
皮膚症状として、暗褐色の皮膚、皮膚掻痒症がみられます。
成長ホルモン障害として、成長障害、性機能障害(女性では月経異常、男性では男子不妊症)を生じることがあります。
また免疫力低下のため、感染し易く、感染後の難治性も伴います。

3.尿毒症

急性腎不全の際、また慢性腎不全の末期状態に、腎機能が大きく低下していることから下記のような変化を生じます。

a. 神経、精神症状
不眠、頭痛、傾眠、不眠、痙攣、昏睡、うつ状態、不安感、錯乱その他。
b. 内分泌、代謝異常症状
無月経、高脂血症、生殖能低下、低栄養状態その他。
c. 末梢神経系症状
知覚異常、麻痺、筋力低下その他。
d. 循環器症状
高血圧、心膜炎、心筋炎、貧血、尿毒症性肺その他。
e. 消化器症状
口臭、悪心、嘔吐、食欲不振、口内炎、腸炎、消化管潰瘍その他。
f. 眼症状
網膜症、角膜症その他。
g. 皮膚症状
貧血状、色素沈着、皮膚掻痒感、皮下出血その他。
h. 電解質異常症状
血清ナトリウム、カルシウム、三酸化水素値の低下、血清カリウム、マグネシウム、四酸化リン値の上昇その他。
i. 造血器症状
貧血、出血傾向その他。
j. その他

【どんな診断・検査】

慢性腎不全との判別は、その経過からも容易で、その原因が腎前性、腎性、腎後性かを速やかに鑑別することが第一です。以下の検査で原因究明と共に治療が開始されます

  1. 血圧、脈拍、呼吸状態、体温、胸腹部聴打診。
  2. 尿検査
    蛋白、糖、比重、尿沈渣(尿を遠心分離機にかけた沈殿物)の顕微鏡的検査。
  3. 尿生科学検査
    尿中尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、クロール、カリウム、リン、カルシウム、浸透圧他。
  4. 血液検査
    赤血球、白血球、白血球分類、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板、赤沈、尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、クロール、カリウム、リン、カルシウム、血糖、浸透圧その他。
  5. 動脈血液ガス検査
  6. 心電図検査
  7. 直腸診(前立腺指診)
  8. 中心静脈圧測定
  9. 腎部超音波検査
  10. レノグラム
  11. 胸腹部単純X線
  12. その他

以上の説明には長文を要し、一般の方には難解な点が多々あるため割愛します。

2.慢性腎不全

急性腎不全の検査にほぼ準じ、腎機能の障害状態、全身状態の把握、人工透析の可否を判断します。

3.尿毒症

急性腎不全にほぼ準じます。


【どんな治療法】

1.急性腎不全

治療の基本は、迅速、的確な診断下に原因を除去すること、尿毒症に対する対症療法の2点で、とくに肺水腫と高カリウム血症は必発で、直接死に直結するこれらの状態の改善策は重要です。

  1. 腎前性腎不全
    全身血流量が減少している場合、血圧低下をはじめとしたショック状態にあることから中心静脈による輸液(点滴)、輸血を行います。輸液、輸血で利尿が得られなければマニトール、フロセマイドその他の利尿剤の静脈注射が行われます。効果が得られないまま漫然と利尿剤の投与を行うのはタブーで、約1時間毎の血液検査で尿素窒素値が上昇していく場合は、利尿剤投与を中止して人工透析を開始しながら対症療法を続けていきます。
    血液透析設備の無い場合は、効率がやや劣っても間歇的腹膜透析で十分です。
    また薬物中毒、劇症肝炎などによる腎不全に対しては、血漿交換も行われます。
    一部の原因疾患を除いては、適切な治療で多くの場合腎機能は回復します。
  2. 腎性腎不全
    痛風性腎症(高尿酸血症性腎不全)による尿細管閉塞の場合は、輸血による尿アルカリ化によって腎機能の回復が望めますが、他の原因による腎性腎不全はそのほとんどが腎機能の回復は望めず、人工透析の対象となります(半永久的人工透析)。
    尿毒症への対処法は腎前性腎不全の場合と同様です。
  3. 腎後性腎不全
    多くは原因の除去(尿路の閉塞の除去)と尿毒症への対応で腎機能の回復が望めます。
    以上、急性腎不全では腎前性腎不全と腎後性腎不全は迅速かつ的確な診断と、適切な治療により多くの場合腎機能の回復が望めますが、腎性腎不全の場合は一部を除いて腎機能の回復は望めません。したがって人工透析の対象となります。

2.慢性腎不全

  1. 保存療法
    食事療法として、高カロリー、低蛋白、カリウム制限食と水分、塩分の制限が基本となります。腎機能の悪化を極力阻止し、症状を安定させる策です。
  2. 薬物療法
    腎機能を回復させるという薬物は無く、慢性腎不全は不可逆性変化(進行はしても機能は回復していくことは無い)にあるため、あくまで対症療法にすぎません。
    したがって貧血に対しては鉄剤、蛋白同化ホルモン剤の投与、高カリウム血症に対してはカリメートの投与、高血圧に対しては降圧剤、利尿剤、強心剤投与などを行います。
  3. 人工透析
    血清クレアチニン値が8mg/dl以上、糸球体濾過率が10%以下となると人工透析の対象となります。血液透析あるいは持続携帯式腹膜透析のいずれかを受けることになります。人工透析は合併症が多く、限界もあり、腎移植が今後もさらに増加するものと推測されます。

3.尿毒症

対処法は前述したようにすべてが対症療法となります。人工透析の対象の有無が図られます。

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