アトピー性皮膚炎
データ提供:医療情報サイトForHealth
監修:医療法人社団杏静会 寺田医院
皮膚科
寺田 都子
【どんな病気】
近年、ダニ、ハウスダスト、スギ花粉などのアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)の増加、生活様式の変化、ストレス社会など環境の変化に応じてアレルギーを持つ人の数が急激に増えています。アトピー性皮膚炎はアレルギーが関係する皮膚の病気の一つです。アトピー性皮膚炎は、「良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を主な病変とする疾患で、患者の多くはアトピー素因を持つ。」と定義づけられています。
【どんな症状】
アトピー性皮膚炎の症状の特徴はかゆい湿疹が慢性的にくり返し生じる点です。そして皮膚症状は年齢によって少し異なります。
乳児期
赤ちゃんの時期は自分でうまく身体をかけないため、よだれやミルク・離乳食の刺激などによる皮膚症状が目立ちます。頭や顔の皮膚が赤くカサカサ・ブツブツになり、ひっかき傷ができたりジクジクしてかさぶたになったりします。かゆみのため髪や耳を引っぱる仕草がみられ、耳たぶの下が切れる耳切れを起こすこともしばしばです。
乳児期に生じる脂漏性皮膚炎(新生児期より乳児期初期に生理的に脂腺機能が亢進するため生じる皮膚炎)は乳児期のアトピー性皮膚炎と非常に症状が似ているため鑑別が困難なことがあります。ですから、頭や顔に上記のような湿疹が2ヶ月以上続くような場合にアトピー性皮膚炎を疑います。
幼小児期
乳児期に引き続いて起こる場合と、いったん治ってから再び生じる場合があります。首やひじ・ひざの後ろ側(屈側)の皮膚が厚く硬くなり、その周りにブツブツができます。皮膚は乾燥性でざらざらし、かゆみが強く引っかき傷でかさぶたができたり、細菌が感染してとびひになったり、ウイルスが感染してみずいぼができたりします。顔の色が部分的に白く粉を吹いたようになるはたけ、耳切れ、唇ががさがさになりひびわれを伴うこともあります。以上の症状は冬に悪くなり夏に軽快する傾向にあります。これらの症状は10歳頃までに治癒していきます。
思春期・成人期
本来なら思春期以前に自然に治っていたアトピー性皮膚炎が、一部の患者さんで思春期を過ぎても治らない、あるいは、発症が思春期・成人期の患者さんが最近多くみられます。成人期に特徴的な皮疹は、小児期の皮疹とは異なる臨床症状を示し、治療が難しいことが知られています。小児期に比べて広範囲に皮膚が厚く、・硬くなり、皮膚はより乾燥し、上半身(顔・首・胸・背中)に皮疹が強い傾向があります。小豆くらいの大きさのかゆいしこりが体幹・四肢にたくさんできることもあります。くびやむねにさざなみ状の褐色の色素沈着が多くの患者さんにみられます。また、成人では長期ステロイド外用を経ていることが多いので顔のびまん性潮紅(赤ら顔)や顔ににきび様発疹を伴っていることも少なくありません。この時期には、アトピー性白内障の併発をみることもあります。
【どんな診断・検査】
問診・視診
アトピー性皮膚炎は皮膚科の専門医であれば一目見れば診断がつきます。しかし、アトピー性皮膚炎は様々な分野の医師が診察・治療を行う機会が多くなっており、そのため、皮膚科の医師以外でも間違えることなくアトピー性皮膚炎と診断できるように基準が設けられました。(日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎の定義・診断基準1994年)
アレルギー検査は参考にはなりますが、アトピー性皮膚炎の診断には必要ありません。かゆみ、皮膚症状、症状の経過のみで診断はできるのです。
【どんな治療法】
治療方法はまず、かゆみを止めることが何よりも先決です。かゆみを止めるためには、かゆみの原因となる化学物質が出るのを押さえる抗アレルギー剤(ザジテン、セルテクト、アレジオン、エバステル、レミカットなど)や、出てしまったかゆみをおさえる抗ヒスタミン剤(ポララミン、ゼスラン、アタラックスなど)を内服し、患部の皮膚にはステロイド外用を行います。外用剤は部位・症状に応じて選択します。例えば小児期の体の皮疹にはstrongのリンデロンV・ベトネベート・エクラーなどで充分ですが成人期の四肢のしこりになってしまったような皮疹にはvery strongのアンテベート・マイザー・ネリゾナ・フルメタなどやstrongestのデルモベートなどが必要になります。小児も成人も顔の皮疹に関してはmildまでのステロイド剤(キンダベート、アルメタ、ロコイドなど)を患部のみに外用し、良くなったら非ステロイド抗炎症剤(アンダーム、スタデルム、コンベックなど)に速やかに切り替えるべきです。というのは、顔は身体に比べて皮膚が薄いため、ステロイドの影響が出やすく、また、人目に触れる部分なのでつい良くなっても化粧下地のように使用してしまいがちだからです。最近ようやく厚生省より認可の下りた免疫抑制剤の軟膏(プロトピック軟膏)は16歳以上の顔の皮疹のみにしか保険の適応はありませんが、ステロイド外用剤に比べてリバウンドが少なく軽快している期間も長いということから、今後の治療に一役買いそうです。
【どんな予防法】
先程述べましたようにアトピー性皮膚炎の診断に検査は必要としませんが、アトピー性皮膚炎に存在する様々な悪化因子を特定することは予防上大切です。血液検査やプリックテスト、皮内テストなどでダニ・ハウスダスト・スギ・大豆・卵・牛乳などの悪化因子をみつけだし、それらを取り除く努力が必要です。ただ、血液検査である特定の物質のIgE値が高いからといってそれがアトピー性皮膚炎の原因の全てとは限りません。過度の食餌制限は栄養障害を引き起こしかねませんし、ダニやハウスダストを取り除こうと掃除に躍起になりすぎて、これがストレスとなりかえって皮膚症状の増悪を来たす可能性もあります。
アトピー性皮膚炎の予防で大切なことは、日常のスキンケアです。アトピー性皮膚炎が治ってもアトピー素因はなくなりません。アトピー性皮膚炎が治ったからといって今まで通りの生活をするとすぐまた皮膚炎をぶり返してしまいます。アトピー素因を持つ人は皮膚が乾燥性でいろいろな刺激に対するバリアー機能が低下しているのです。毎日入浴後に全身に保湿剤(ベビーローション、ザーネ軟膏、ケラチナミン、ワセリンなど)を薄く塗るだけで様々な刺激から皮膚を守ることができます。そして直接肌に触れる衣類はなるべく綿素材のものを選びましょう。
【どんな治療薬】
内服薬
抗アレルギー剤:ザジテン、セルテクト、アゼプチン、アレジオン、エバステル
抗ヒスタミン剤:ポララミン、ゼスラン、ニポラジン、アタラックスなど
外用薬
副腎皮質ホルモン剤(ステロイド外用剤)
strongest(最強)
:デルモベート
very strong(強い)
:ダイアコート、ジフラール、ネリゾナ、フルメタ、マイザー、
トプシム、パンデル、アンテベートなど
strong(やや強い)
:リンデロン、ベトネベート、フルコート、エクラー、
アドコルチン、プロパデルム、リドメックスなど
mild(やや弱い)
:ロコイド、キンダベート、アルメタ、ケナコルト、レダコートなど
weak(弱い)
:コルテス、プレドニゾロン、ネオメドロールなど
非ステロイド抗炎症剤
アンダーム、コンベック、スタデルム、スレンダム、アズノールなど
免疫抑制剤
プロトピック
角化治療剤・保湿剤
ケラチナミン、ウレパール、ヒルドイド、親水ワセリンなど
その他
亜鉛華軟膏(チンクザルベ、サトウザルベ、ポチシート)
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