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【どんな病気】


不眠で悩む人たちは、一般人口のうちでもかなりの数になるといわれています。不眠は、健康な人でも、特別な機会などで生じることがありますが、多くの精神障害の部分症状としても現れてきます。また、実際にはよく眠れているようでも自覚的な症状として「眠れない」という人もいます。高齢者などでは、「何日も一晩中全然寝ていない」と強硬に訴える人たちもいます。実際に眠っているかいないか以上に、主観的な熟眠感も問題になるということでしょう。ここではまず睡眠の仕組みを知る必要があります。

不眠症

 睡眠は脳波、筋電図、眼球運動を同時に電気的に記録することによって、いくつかの段階に分けることができます。大きく、ノンレム睡眠とレム睡眠に分かれます。入眠するとまずノンレム睡眠が現れます。その後、ノンレム睡眠の第1段階から第4段階まで進みます。ノンレム睡眠の第4段階までくると、今度はレム睡眠になります。これを一つの周期として、朝まで繰り返すのが正常の睡眠パターンです。図に示したように、朝になるにつれて、レム睡眠の時間が延び、深い睡眠であるノンレム睡眠の第3,4段階が減ってくるのがわかります。

レム睡眠のときは、体を支える筋肉がゆるみ、よく夢を見ています。朝覚えている夢は、だいたい覚醒直前のレム睡眠期の夢が多いようです。レム(REM)というのは、この時期にぴくぴくした急速な眼球運動が見られることから名づけられました。
レム睡眠はノンレム睡眠の最も深い段階からしか移行しません。高齢になるとこの睡眠パターンが変化してきます。レム睡眠や深い睡眠である第3,4段階が減ってきます。夜間の覚醒の回数も増えて、全体の睡眠時間も少なくなります。よく、年をとると眠れなくなるといいますが、これは生理学的にもいえることです。

  睡眠の障害で使う用語をあげておきます。寝付きが悪いのを入眠障害、途中で何度も目が覚めてしまい(中途覚醒)よく寝た感じがしないものを熟眠障害、早朝に目が覚めてしまうのを早朝覚醒などといいます。実際は、不眠症はこれらの組み合わせであることが多いようです。老人では熟眠障害を訴えることが多く、うつ病では早朝覚醒が特徴的です。

【どんな症状】

医学的に不眠を分類すると次のようになります。

原発性不眠症:
原発性不眠症うつ病などの精神疾患や身体疾患に伴って生じるものでない睡眠障害をいいます。このうちほとんどが、いわゆる神経質性不眠とか習慣性不眠とかいわれる不眠症でしょう。不眠にこだわりすぎていて、夜になると今夜は眠れるかとばかり考えて、かえって緊張や不安を高めてますます眠れなくなってしまうという悪循環を作っていることがあります。「眠れないと身体だけでなく神経や脳をだめにしてしまうのではないか」とおそれて、一種の睡眠に対する恐怖症のようになっている人もいます。周囲から、医者にいって睡眠薬をもらってはどうかと勧められても、「睡眠薬は危険でもあるし、それがなくては眠れなくなったらどうしよう。」と悩みます。もともと不安の高い人に見られやすい状態です。

他の精神疾患に関連した不眠症:
精神疾患に関連した不眠症うつ病や精神分裂病などの精神疾患だけでなく、いろいろな神経症に伴って生じる不眠症です。これについては、もとの病気のほうを参照してください。

身体疾患や依存性の薬物による不眠:
身体疾患や依存性薬物による不眠症身体疾患や覚せい剤などによる不眠をいいます。

【どんな診断・検査】

不眠症の診断は、おもに患者さんの訴えによります。主観的な不眠の内容だけでなく、日中の眠気の有無や、不眠に対するこだわり方などを聞いて診断します。最近は何時に寝て、何時に起きているかという記録があると、診断に役に立ちます。不眠はいろいろな病気の部分的な症状でも見られることがあるので、その点にも注意して診断します。

 客観的に不眠を調べるには、上記の脳波、眼球運動、筋電図を同時に夜間記録する睡眠ポリグラフィーを行う必要があります。これは特別に苦痛な検査ではありませんが、2,3日連続して記録しなければならないので、かなりの手間暇がかかります。検査する側も泊まり込みになりますので、どこの病院でも施行可能というわけではありません。したがって、このような検査は不眠があるだけでなく、子供の夢中遊行(いわゆる夢遊病)や夜驚症、激しいいびきで呼吸が一時的に停止することのある睡眠時無呼吸症候群などが疑われる場合に、大学病院などの大規模な病院で行うことが多いようです。ただし、先に述べた原発性不眠症などでは、睡眠ポリグラフィー上はぐっすり寝ているのに、まったく眠れていないと訴えることもあるので、主観的な熟眠感と検査所見はしばしば一致しません。

【どんな治療法】

治療法はまずよい睡眠習慣を作ることから始まります。

  • 毎日同じ時間に寝起きし、食事を摂る
  • 昼間決まった運動をする
  • 温かい風呂で温まり、寝る前のアルコールやタバコは避ける

これらの事柄を試みてもやはり不眠が続くときには、睡眠薬が必要となります。
最近の睡眠薬はベンゾジアゼピン系とよばれるもので、長期投与しても安全ですし、だんだん効果が低下してくるということもありません。ただし、急に中止すると、不眠が出てくることがあるので、やめたいときには医師と相談して徐々に減らすようにします。

 ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には、効果が短いものや比較的長いものがあり、不眠の種類に応じて選択します。入眠困難な人には、効果が早く現れるものを選びます。このような睡眠薬は、睡眠導入薬などとよばれて宣伝されていることもあります。

 一方で、早朝覚醒や熟眠障害のある人には、作用の長い薬を選びます。睡眠薬の副作用として、重篤なものはあまりありませんが、明け方に眠気が残ってしまうことがあるのは、やむをえないでしょう。また、高齢者のばあいなどは、筋肉の緊張がとれて転倒しやすくなったりすることもあるので、注意が必要です。

 うつ病や神経症などで不眠が生じている場合には、もとの病気を治療するというのが原則です。もちろんこのときも、不眠に対する適当な治療は必要です。

 不眠症としては、これ以外にも睡眠・覚醒スケジュール障害とよばれる病態によるものがあります。これはその人の睡眠覚醒リズムが一日24時間に合わないために、だんだんと就寝時間がずれていってしまうものや、リズムの位相がずれていて起床時間をどうしても早くできないなどがあります。このような障害は比較的まれですが、十分な検査が必要となります。治療法としては、ビタミンB12の服用や、高照度光療法(朝の決まった時間に強い光を一定時間当てるようにする)などの特殊なものがあります。

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