◆はじめに
緑内障患者は、推定で全国200万人以上、約30人に1人が緑内障であると言われており、失明原因の上位を占めている病気です。
2000年から2001年に岐阜の多治見市で実施された40歳以上4,000人対象の免疫調査では、有病率6%、実に17人に1人が緑内障という高い結果もでています。
【どんな病気】
1. 緑内障とは?
この病気は、一般に慢性的な高眼圧などにより、視神経乳頭や視神経に障害を受け、視野異常(見える範囲が狭くなる)をきたす病気で、一度障害を受けてしまった視神経は回復しません。そのため早期発見して進行しないようにすることが大事になります。
2. 緑内障の生じる仕組み
【眼球断面図/眼圧上昇の図】
- ■房水について
- 房水は虹彩の後ろ(後房)にある毛様体でつくられ、瞳を通り虹彩の前(前房)に出てきて、隅角(ぐうかく)から白目の静脈へ排出される水です。
水晶体や角膜に必要な 代謝物質の供給と、房水圧により眼球形を保っています。 - ■高眼圧とは
- この生成や排出のバランスが崩れると目の内圧が変わります。内圧が高い状態を高眼圧といいます。
(右図)
毛様体の房水の生成が多かったり、隅角からシュレム管への排出が少なかったり、青い矢印の房水の流れが妨げられると、目の内圧が上がります。特に弱い視神経乳頭に多く圧力がかかります。
3. 緑内障の種類
1)開放隅角緑内障
2)閉塞隅角緑内障


- 1)原発開放隅角緑内障
- 隅角(ぐうかく)の形状は正常だが、線維柱帯(せんいちゅうたい)からの房水排出が悪く高眼圧が続き、視神経を圧迫し障害をあたえてしまいます。
- 2)原発閉塞隅角緑内障
- 隅角の形状が狭く、房水排出が悪く高眼圧になる。急激に眼圧上昇をきたし、急性緑内障発作を起こすことがあります。
- 3)正常眼圧緑内障(右図)
眼圧が正常範囲(10〜21mmHg)内なのに、開放隅角緑内障と同様の症状がでる。日本人に多く、緑内障患者の半数以上は正常眼圧緑内障といわれています。- 4)続発性緑内障
- 他の疾患や炎症、外傷それに薬物などにより二次的に起こる緑内障です。
- 5)先天緑内障
- 生まれつき房水の排出が悪く緑内障になる場合です。
【どんな症状】

高眼圧により視神経乳頭
が圧迫され陥凹する。
- ■ほとんどの場合ゆっくりと視野が狭まっていきます。
- 1)開放隅角緑内障や閉塞隅角緑内障の場合
視野変化が起こる前から眼圧は高めで推移し、視神経や視神経乳頭にダメージを与えていきます。 - 2)正常眼圧緑内障の場合
眼圧は正常値ですが同じように視神経がダメージを受けていると考えられます。 - ■視野変化の推移
- 【初期】からすぐに暗点になるのではなく、徐々に感度が低下していき自覚症状はありません。
【中期】に入り見えない部分が広がっていきますが、両眼で見ていると自覚しにくく、気づかないことが多いようです。
【後期】に入り視野の大部分が欠損して自覚するようになります。
■急性緑内障発作- 閉塞隅角緑内障の場合、ときとして一気に眼圧が上昇、急性緑内障発作を起こすことがあります。この場合
【自覚症状】激しい眼痛、嘔吐、悪心、視力低下などがある。
【他覚所見】角膜浮腫(角膜混濁)、結膜・毛様充血がある。
急性緑内障発作の場合一夜にして失明することもありうるので適切な処置が必要です。
【どんな診断/検査】
検査は眼圧、隅角、眼底、視野検査などが主に行なわれます。
- 1. 眼圧検査
眼球の硬さ(眼球の内圧)を測定する検査です。
■正常眼圧は10〜21mmHgで、それ以上だと高眼圧症で緑内障になる確率が高くなります。
■10〜21mmHg範囲内でも、正常眼圧緑内障になる可能性はあります。
【検査方法】・目に風を当てて測る検査方法
・直接測定機器を目に触れる検査方法- 2. 隅角検査
眼圧が高くなるのは、房水の流出不全が原因であることが多いので、房水の排出口である線維柱帯のある隅角(角膜と虹彩の間)を観察することは重要です。
【検査方法】
隅角部分は通常、屈折の関係で直接観察できないので、角膜に隅角鏡と呼ばれる検査用のコンタクトレンズを接触させ、観察します。このとき点眼麻酔、角膜保護剤を使用するので圧迫感はあるが痛みはあまりありません。- 3. 眼底検査
-
視神経乳頭や視神経線維を直接観察する検査です。

【眼底写真】視神経乳頭(黄白色
の部分)が圧迫され陥没している。
■眼底鏡で観察しますが、詳しく検査するときは瞳を大きくして(散瞳)して検査することもあります。【散瞳について】
散瞳は散瞳薬を使用します。一般的に使用されている散瞳剤は、散瞳するのに最低30分〜1時間ぐらいかかります。
散瞳中は瞳が拡大するのでまぶしく、同時に調節力がなくなるので非常に見えづらくなります。元の状態に戻るまで3〜6時間くらい要しますので注意が必要です。 - ■隅角検査のときと同様の検査用コンタクトレンズや眼底検査用レンズで検査する場合もあります。
- 4. 視野検査
- 片眼で一箇所を見続けているときに、周辺に見える範囲を調べる検査です。緑内障の場合見える範囲が狭くなったり、部分的に見えなかったりしますので、病気の進行状況を調べるのに定期的に検査をしていきます。
【検査方法】
●スクリーニング用の絵や格子模様を見るだけの簡単な検査
●広範囲の視野を調べる動的視野検査 (動く光点が視野に入る認識点を調査)
●より詳しく見える範囲や感度を調べる静的視野検査
(静止した強弱様々な光点の集まりから認識できるものを指定する)
光点の認識度の分布図から、被検者の視野を判定することができます。
【どんな治療法】
一度障害を受けた視神経を回復させることは出来ません。したがって治療は、眼圧を低くコントロールすることで進行を止めたり、遅らせるための治療となります。
- 1. 薬物治療
1)多くの場合、眼圧を下げる点眼薬が基本になります。
・房水の排出を促進する点眼薬
・房水の産生を抑える点眼薬
があります。使用する点眼薬はその人にあった点眼薬を選択し、時には複数の点眼薬を併用して使用する場合もあります。
2)急性緑内障の場合は点滴により急いで眼圧を下げます。
眼圧を下げる内服薬もありますが全身に回りますので副作用に注意が必要です。
- 2. レーザー治療
1)薬物治療にて眼圧コントロールが不十分なとき
線維柱帯にレーザーを照射することにより、線維柱帯の隙間を広げ、房水の流出を促進します。 ※線維柱帯は隅角部分にありメッシュ構造で、
房水はそこを通りシュレム管へ排出される。
2)急性緑内障の場合
虹彩(茶目)にレーザーにより穴を開け、後房から前房への房水の流れを改善します。
また閉塞隅角緑内障の方や前房が浅い方 に急性緑内障の予防として行なう場合もあります。
- 3. 手術
-
薬物やレーザー治療で眼圧がコントロールできない場合には手術を行ないます。

【急性緑内障発作の写真】
虹彩の矢印部分にレーザーで穴を開け、
後房から前房へ房水が流れやすいように、
治療をした。(上記レーザー治療の一例)
大きくわけて次の2方法があります。
1)房水の排出をさせる手術
さらに大きく分けて、次の2方法があります。
・線維柱帯を切除して排出を促進させる方法
・房水を眼外に少しずつ排出させるようにする手術
2)毛様体での房水産生を抑制させる手術
それぞれに対して多くの手術方法があります。手術方法は患者さんの緑内障のタイプや状況により選択されます。
【どんな予防法】
1. 緑内障になる確率が高い人- 日常生活で特に気をつけることはないと思います。しかし、高眼圧の方、近親者に緑内障の方がいたり、遠視や強度近視の方は緑内障になる確率が高いので注意が必要です。
- 2. 予防のための検査の必要性
- 緑内障は自覚症状が現れにくく、自覚した時にはかなり進行している可能性があります。一度視神経が障害を受けますと回復しません。
30人に1人は緑内障といわれています。たまには検診などで眼圧や眼底検査を受けることをお薦めします。 3. 緑内障と診断されている方へ
緑内障と診断されている方は、進行してないからと勝手に治療を中止したりせず、医師の指示に従ってきちんと治療を続けることが大切です。