特定非営利活動法人 標準医療情報センター

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【肝硬変とは】

肝臓

 慢性の肝臓の障害や炎症が長く続くと、肝臓の細胞(肝細胞)が変性(性質が変わること)や死滅(壊死)して数が少なくなります。障害に打ち勝って残った細胞や再生した肝細胞群の周りを取り囲むように線維組織の細胞数が増えて多くの「再生結節」という構造を形成します。その結果、全体として肝臓は硬く小さくなっていきます。ほとんどの肝臓の組織が再生結節で置きかわった状態が肝硬変です。慢性肝炎の終末像としての肝硬変に至ります。
 肝細胞は再生する能力が大きく、 残った細胞が増えて死滅した細胞群の分まで働く(機能する)ようになります。肝機能が正常に近く代償されていて、症状がほとんどないか極めて少ない時期を「代償性肝硬変」といいます。これに対して肝細胞の予備力が限界を超えて肝機能が更に悪化し、さまざまな症状(黄疸、腹水、出血傾向、食道静脈瘤、肝性脳症など)が現れる段階を「非代償性肝硬変」といいます。そして、ついには肝不全状態に至ります。

【原因】

C型肝炎ウイルスによるC型肝硬変 約70%、B型肝炎ウイルスによるB型肝硬変 約10%、
アルコール性肝硬変 約10%、その他約10%と見られています。最近、メタボリック症候群に関連した非アルコール性脂肪性肝炎が原因として注目されてきています。

【診断】

身体所見
肝腫大(肝臓は硬く結節性に触れる、末期には小さくなる)。皮膚のくも状血管拡張(首や前胸部の皮膚の毛細血管が1~2cm大のくも状に拡張する)、手掌紅斑(手のひらが斑状に赤くなる)。脾臓腫大。黄疸(皮膚が黄色くなる)。腹水(おなかに水が溜まって張る)。貧血等。病気の時期によって多彩な症状が現れます。
血液検査
総ビリルビン値の上昇(黄疸が現れる)。AST・ALT上昇(AST>ALT型)。肝細胞の蛋白合成能力が低下して血清アルブミン・コリンエステラーゼ値の低下。プロトロンビン時間延長・血小板減少等(皮膚に出血斑が出やすくなる)。これらの異常が現れます。
画像検査
腹部超音波検査や腹部CT検査で脾臓の腫大(腫れ)、肝臓の萎縮(縮小)の程度、肝臓表面の凹凸不整の状態、肝臓内部のエコー像の不均一性などを観察しますが、肝硬変の初期には画像では明らかに現れない場合が多い。
肝線維化マーカー検査
肝臓の線維化が進行するに伴って血中のヒアルロン酸、IV型コラーゲン、プロコラーゲンIIIペプチド(P-III-P)などの物質が増加します。
血小板数の測定
血小板数の減少は肝臓の線維化の程度を反映します。肝硬変になりますと、その数は10万/μL以下に減少します。
組織検査(肝生検)
肝硬変

肝硬変の腹腔鏡写真

超音波や腹腔鏡検査(腹壁に直径2cm程の穴を開け、腹腔鏡を挿入して肝臓の表面を観察する)で観察しながら腹壁から生検針を穿刺して肝臓の組織片を採取し、顕微鏡下で線維化の程度や再生結節の程度を観察します。確実な診断が得られます。

【合併症】

門脈圧亢進
肥大した再生結節により肝臓の中の血管系が圧迫されて門脈血管圧が高まり、門脈系(腹部の臓器や脾臓の血液を集めて肝臓に流入する血管)の血流が肝臓内を通過することが困難になります。そのために胃や食道の粘膜下を通る静脈の方へと血流のバイパスが形成されます。
食道・胃静脈瘤
肝硬変が進行するにつれて門脈圧が亢進し、胃・食道静脈圧も高まります。その結果静脈瘤(静脈が数珠状に膨らむ)が形成されます。静脈瘤が高度になると破裂して吐血・下血が起こります。
肝性脳症
腸管で産生されたアンモニア等の有害物質が、肝機能低下のため代謝されずに蓄積されて脳に達し、そのため意識障害や精神神経症状を起こします。
その他さまざまな臓器障害・電解質異常等も起こります。

【ウイルス性肝硬変の治療】

 肝硬変例においてもウイルスが排除された場合は、肝臓の線維化した組織像が改善することが知られており、可能な限りIFN(インターフェロン)や核酸アナログ製剤治療でウイルスを排除あるいは減少することが推奨されています。
 血中のウイルス量や遺伝子型が治療効果に影響します。ウイルス量が多い場合や遺伝子型1型では2型に比べて治療効果が低いので、IFN投与による血小板減少の副作用などを考慮しながら治療法を選択します。
 以下に最新の治療ガイドラインを示します。

日本肝臓学会:厚生労働省研究班によるウイルス性肝疾患の治療ガイドライン;
(2011年3月改定) (日本肝臓学会ホームぺージより引用改変)

1)ウイルス性肝硬変に対する包括的治療のガイドライン
A)治癒目的のIFN療法(C型肝炎)
  1. 1b・高ウイルス量以外のC型代償性肝硬変に対するIFN療法は治癒率も比較的高いことから年齢、血小板値と副作用の素因などを考慮して積極的に行うのが望ましい。※1
  2. 1b・高ウイルス量のC型代償性肝硬変に対するIFN療法は治癒率も低いことから遺伝子構造や遺伝子変異を測定し、IFNの効果の良い症例を選択すべきである。
B)治癒目的の核酸アナログ治療(B型肝炎)
  1. B型肝硬変(代償性・非代償性)症例への初回治療の核酸アナログ製剤はエンテカビルを第一選択とし、一方、ラミブジンまたはエンテカビル耐性株出現例ではラミブジン+アデホビル併用療法とする。※2
  2. B型肝硬変(代償性・非代償性)症例への核酸アナログ投与は、HBs抗原が陰性化するまで長期投与する。※3
C)発癌予防および肝癌再発予防目的の治療
  1. C型肝硬変で治癒目的のIFN無効例にはALT,AFP値の低下を目指しIFNの少量長期療法を行う。または、ALT値改善を目指し強力ミノファーゲンC、ウルソデオキシコール酸などの肝庇護療法を行う。※4
  2. B型肝硬変および肝細胞癌治癒後の症例でHBV DNA 4 log copies/mL(ウイルス量の測定単位)以上を示す例では核酸アナログ製剤でHBV DNAを低下させ再発予防を目指す。※5
  3. 肝硬変症例には血清アルブミン値の低下を考慮して分岐鎖アミノ酸製剤(リーバクト)を使用して発癌の抑制を目指す。※6
2)肝硬変に対するガイドライン補足
  1. C型代償性肝硬変に対するIFNの投与法は、初回投与量1日600万単位をできる限り連日投与(2~4週間)し、HCV RNAが12週以内に陰性化した症例はその後慢性肝炎同様48週間~72週間の長期投与が望ましい。
  2. C型代償性肝硬変に対するIFN投与で12週以上経過してもHCV RNAが陰性化しない症例では、発癌予防を目指して1日300万単位、週3回投与の長期投与を行うが、投与開始6か月以内にALT値やAFP値の有意な低下が見られない場合は発癌抑制効果が期待できないため、治療を中止する。
  3. 血小板値が5万以下のC型肝硬変では、IFNの治療効果を十分検討の上、脾摘手術(脾臓を摘除する)あるいは脾動脈塞栓術(脾動脈を塞栓物で閉塞して血流を遮断する)施行後IFN治療を行うことが可能である。※7

[筆者注記]

  • ※1 IFN治療でウイルスが排除された場合(ウイルス学的治癒という)、肝臓の線維化構造が改善されて肝臓癌の発生率も低下し、発癌の予防効果が認められています。IFNによる治療効果は、投与終了後少なくとも6か月間HCV RNAの陰性化が持続している場合、ウイルス排除(ウイルス学的治癒)と見なします。
  • ※2 エンテカビルは耐性ウイルスが現れにくく抗ウイルス作用も強力なので、初回治療では第一選択となります。
  • ※3 代償性肝硬変では、核酸アナログの効果が続く限り非代償性肝硬変への進行を抑制する効果があります。
    非代償性肝硬変でも抗ウイルス効果が見られ、肝臓の予備力が回復して肝不全症状が改善します。
  • ※4 IFNが無効でウイルス排除が出来ない場合でも、IFNを少量長期投与することでALT値が正常化すれば、病変の進展が阻止され線維化が抑制されます。
  • ※5 HBV DNA 量が4以上になるとHBVが活動性となり、病変が再燃することがあります。
  • ※6 血清アルブミンが減少すると発癌の危険因子となるので、この場合はバリン、ロイシン、イソロイシンなどを含む分岐鎖アミノ酸剤を投与してアルブミン低下を防ぎます。
  • ※7 門脈圧が高くなって脾臓が腫大して機能が亢進すると、脾臓に溜まった血小板が破壊されて減少します。この場合、脾臓を摘除するかあるいは脾動脈を詰め物で詰めて血流を遮断し、血小板数の増加を図ります。
その他の肝庇護療法
IFN療法の効果がなかったり、副作用やなんらかの理由でIFNが使用できない場合は、グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンC)、ウルソデオキシコール酸などを投与して出来るだけALT値の正常化を目指します。
肝癌のスクリーニング
肝硬変患者は「肝癌超高危険群」と見なされています。これらの患者に対しては、3~4か月に1回腹部超音波検査と腫瘍マーカー測定を実施し、半年~1年に1回程度腹部CTあるいはMRI検査を併用して、肝癌の早期発見に努めることが望ましいです。
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