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【急性上気道感染症】

上気道

 空気の通り道である気道は、鼻前庭に始まり、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、細気管支を経て肺胞まで達しています。このうち、鼻前庭から喉頭までを上気道、気管より末梢を下気道といいます。そして、外界(ほとんどは大気中)から微生物が侵入して上気道で急性感染が起こったものを急性上気道感染症と称し、これには急性上気道炎(いわゆる“かぜ症候群”)、急性咽頭炎・扁桃炎、急性喉頭炎、急性喉頭蓋炎が含まれますが、大部分は“かぜ症候群”です。

【かぜ症候群とは?】

 一般に風邪といわれているもので、呼吸器感染症のなかでも最も頻度の高い疾患です。原因となる微生物としてはウイルスが大部分で、全体の80~90%をしめ、残りは一般細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどです。ウイルスの中ではライノウイルス、コロナウイルスが多く、これに続くのがRSウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスです。これらのウイルスには季節的流行の特徴があり、ライノウイルスは春と秋、コロナウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルスは冬に多い傾向があります。
かぜ症候群の確定診断には、ウイルス抗体価の上昇をみる血清学的検査や抗原の検出が必要ですが、通常は流行時期や患者さんの症状・身体所見から診断を下し、対症療法が行われます。日常診療上、注意しなければならないのは急性気管支炎との鑑別です。

  臨床兆候 原因微生物
かぜ症候群 咳が主症状ではなく、鼻症状や咽頭・喉頭症状などが主である。
咳は通常7~10日で鎮静化する。
高熱を伴うことは少ない。
ライノウィルス
コロナウィルス
パラインフルエンザウィルス
RSウィルス
インフルエンザウィルス
アデノウィルス
急性気管支炎 咳は激しく、主症状で長期化することがある。
症状はしばしば重症で、いわゆる急性炎症性疾患の病状を呈すことがある。
インフルエンザウィルス
アデノウィルス
百日咳菌
マイコプラズマ
肺炎クラミジア

治療方針

図2-1 臨床診断からみた治療方針

臨床診断からみた治療方針

図2-2 患者背景からみた治療方針

患者背景からみた治療方針

 通常、成人は1年間に3~4回の“かぜ症候群”に罹患し、鼻汁、咳、咽頭痛、発熱などの症状を示します。軽度の場合、罹患した患者さんの大部分は自宅療法で自然治癒するか、いわゆる“かぜ薬”としての売薬を服用します。また一部の患者さんは医師による診断・治療を希望するか、あるいは重大な病気ではないことを確認してもらうために医療機関を受診します。そして医師は、来院した患者さんの半分以上に抗菌薬(抗生物質)を処方しているのが現状です。しかし、多くの感染症専門家は、このウイルス感染症に対する抗菌薬の投与こそが耐性菌増加の原因となっていると指摘しています。すなわち、“かぜ症候群”は一般に自然治癒するものであり、かぜ薬でウイルス感染そのものを治すものではないことを理解し、抗菌薬の濫用を避けなければなりません。

 したがって、“かぜ症候群”の治療の基本は、日常の患者さんの啓発(資料)と対症療法(図2)です。対症療法の目的は様々な不快な症状を緩和することにあります。しかし、これらの症状はウイルス感染に対する生体防御反応として出現している場合もあり、薬物療法そのものが防御反応を抑えて治癒を遅らせることもあり得ます。よって、対症療法は過剰とならないよう、慎重に行う必要があります。


1. 発熱や痛みに対して
グレードC1
(やっても良い)
○これらの症状に対して、患者さんの苦痛が強い場合に以下の薬剤が投与されますが、基本的には頓用で使います。
成人:酸性非ステロイド系抗炎症薬
小児:アセトアミノフェン(非ピリン系)

2. 鼻汁、鼻づまり、くしゃみに対して
グレードC1
(やっても良い)
○抗ヒスタミン薬、吸入副交感神経遮断薬、点鼻血管収縮薬などを短期間、回数を限って使用します。

3. 咳・痰に対して
グレードA
(強く勧める)
○末梢性鎮咳薬
含嗽水、トローチ(咽頭痛、咽頭不快感を伴う咳に)
グレードB
(やったほうが良い)
○末梢性鎮咳薬
去痰薬(痰を伴う咳に)、
気管支拡張薬(喘鳴や呼吸困難を伴う咳に)
グレードC1
(やっても良い)
○中枢性鎮咳薬
<非麻薬性>デキストロメトルファン、
リン酸ジメモルファン、クロペラスチン
グレードC2
(やらないほうが良い)
○中枢性鎮咳薬
<麻薬性>リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン

4. 咽頭発赤・腫脹、咽頭痛に対して
グレードA
(強く勧める)
○含嗽水、トローチ

5. 扁桃腫脹に対して
グレードA
(強く勧める)
○高熱を伴ったり、膿性分泌物(膿栓、白苔)がみられる場合には、細菌感染の合併を考え抗菌薬を投与する

6. その他の治療
グレードA
(強く勧める)
○安静にしてバランスのとれたincho.jpg食事をとる
○十分に水分を補給し、適当な室温と湿度を保つ
グレードC1
(やっても良い)
○漢方薬、とくに葛根湯は初期に有効とされている

 既に述べたように、“かぜ症候群”のすべてに抗菌薬を処方してはならない。
…グレードD:やってはいけない
しかし、以下の所見がみられる場合には抗菌薬(β-ラクタム系薬、マクロライド系薬)を使用する。
…グレードB:やったほうが良い

  • 高熱の持続(3日間以上)
  • 膿性の痰、鼻汁
  • 扁桃腫大と膿栓・白苔の沈着
  • 中耳炎や副鼻腔炎の併発
  • 強い炎症反応(白血球増多、CRP高値など)
  • ハイリスク(高齢者、免疫不全、悪性腫瘍、他の重篤な呼吸器疾患の合併など)の患者さん

(2013.9.20更新)

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