日本神経学会治療ガイドラインに沿ったてんかんの治療
てんかん治療ガイドライン(2002臨床神経42:549-597、2002)
監修:昭和大学 藤が丘病院
脳神経外科
鈴木 龍太
1 てんかんとは
てんかんの種類
 てんかんは人口1000人に5−10人(0.5−1.0%)の割合で見られるとても多い病気です。てんかん発作(けいれん発作)とは種々の原因により大脳の神経細胞が無秩序に興奮して起こるもので、この発作を繰り返し起こすものを「てんかん」と言います。神経細胞が興奮するとその細胞と繋がっている身体の部分が自分の意思とは関係なく動いてしまいます。手を支配している神経細胞が興奮すると手がピクンピクンと規則的に動いて止まらなくなります。

 大脳深部に原因があると意識がなくなって倒れ、手足がピクピクするてんかん発作(けいれん発作)を起こす場合もあります。てんかんの種類は国際分類(1981)に従います。国際分類ではてんかんを局在関連てんかんと全般てんかんに分け、それぞれを原因の分からない特発性、外傷や脳腫瘍など原因がはっきりしている症候性、原因が隠されている潜因性に分けています。


2 診断

てんかんの治療の前にまず診断が大切です。てんかんの種類によって治療も変わるからです。診断には患者さんおよび発作目撃者の話が最も重要です。



グレードC1
(やっても良い)
患者さんは発作のときに意識がない場合や自分で発作に気がつかないこともありますから、場合によっては発作目撃者に電話してでも詳細な状況を確認する必要があります。
突然起こる一過性の意識障害のうち40%が血管迷走神経性失神(いわゆる失神で若い女性に多い)で、てんかんは29%です。

家族関係では親にてんかんがあると子供にてんかんが起こる危険性は6−12%です。

頭部外傷後一週以内にけいれんを起こした人は将来てんかんとなる確率は25%と高率ですが、外傷直後にけいれんを起こさなかった人が後でけいれんを起こす確率は1%しかありません。



3 検査

 
てんかんだとすぐに脳波をとってもらおうと思うかもしれません。成人患者に関して言えば一回の脳波検査でてんかん様異常波形がみられるものは30%前後しかありません。一方で脳波を行うと健康な人でも3%前後にてんかん様異常波形を認めます。ちょっと混乱するデータですね。特発性全般てんかんが25歳以上で初めて起こることはまれで、殆ど外傷や脳血管障害、脳腫瘍等の原因でおこります。このような病変はCTやMRIで発見することができます。よって↓
グレードB
(やったほうが良い)
25歳以下ではてんかん発作および分類を正しく行うために脳波を記録すべきである。
25歳以上では明確な病歴が十分得られれば診断のために脳波は必ずしも必要ではない。一方画像診断は治療可能な病変を見つけるために必ず施行すべきである。



4 治療

4−(1)治療開始
グレードC1
(やっても良い)
最初のてんかん発作後直ぐに抗てんかん薬を投与すると、その再発率は51%から25%に減少する。よって最初の発作後に治療開始したほうがよい。

4−(2)抗てんかん薬の第一選択
 
現在日本で比較的多く使用している抗てんかん薬は次の通りです。
フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸、フェノバルビタール、プリミドン、クロバザム、ゾニサミド、クロナゼパム、ジアゼパム
 発作のタイプによって抗てんかん薬の選択が変わります。
グレードA
(強く勧める)
部分発作に対して第一選択薬はカルバマゼピンである。次はバルプロ酸フェニトインである。
グレードB
(やったほうが良い)
全般発作にはバルプロ酸が第一選択である。
分類できないてんかん発作で25歳以下のものはバルプロ酸で治療するが、25歳以上のものは特発性ではないと考えられるのでカルバマゼピンを使用する。
但し若い女性の場合はカルバマゼピン、フェニトイン、バルプロ酸には胎児催奇形性があることを念頭において治療薬を選択すべきである。
血中濃度測定は次の場合以外必要ない。
 (1)フェニトイン用量の調節(グレードB
 (2)薬物中毒の確認
 (3)抗てんかん薬を飲んでいて十分な治療域にあることの確認

4−(3)抗てんかん薬の追加
単剤療法で効果がないときは用量や患者がきちんと飲んでいるかどうかが確認できたら別の薬剤を追加します。
グレードB
(やったほうが良い)
カルバマゼピンにはバルプロ酸フェニトインにはバルプロ酸を追加する。
グレードC1
(やっても良い)
発作がコントロールできたら第一選択薬を中止する。
グレードA
(強く勧める)
2剤でも十分なコントロールできないときは日本では未発売であるがラモトリジンを加えると効果がある。

4−(4)てんかん重積状態の治療
 
てんかん重積状態とは全般的発作が止まらなくなった場合をいいます。
  • ジアゼパム10mgずつ20mgまで静注する。
  • フェニトイン15−20mg/kgを毎分50mg以下の速度で静注する。
  • 重積がコントロールできないときは持続脳波モニタリングと人口呼吸器使用の全身管理を行いながら、全身麻酔下に置く。


4−(5)てんかんの外科治療
グレードB
(やったほうが良い)
抗てんかん薬治療が効果ない場合は外科的治療を考える。特に海馬硬化症を原因とする側頭葉てんかんは扁桃体・海馬切除術、側頭葉前部切除術が効果がある。



5 抗てんかん薬の中止

グレードA
(強く勧める)
2年間発作のない場合は抗てんかん薬の服用中止の可能性を考慮して患者と話し合う。
発作の再発が起こりやすい患者は
 (1)16歳以上
 (2)全般性発作があったもの
 (3)多剤抗てんかん薬服用中、治療開始後にも発作があった患者
発作再発が起こり難い患者は(1)発作がなかった期間が5年以上と長い患者。
グレードB
(やったほうが良い)
発作再発が起こり難い患者は(1)発作がなかった期間が3−5年の患者。
 但し1度に2剤を中止しないようにする必要があります。

 てんかんを持つ人の運転に関して日本てんかん学会の法的問題検討委員会の判定指針では、3年以上発作がない人の非職業的運転は認めています。



6 患者への情報提供

患者家族が理解できる場合には次の情報は提供したほうがよいです。

  • 分類・疫学・予後・遺伝
  • 患者に発作日記をつけてもらう
  • 抗てんかん薬の効果と副作用の情報
  • 発作誘発因子として睡眠不足、アルコール、ストレス、発熱、胃腸疾患
  • 生活の合意にかんして、車の運転、職業、教育、避妊、妊娠の相談
  • 発作時の救急手当


日本てんかん協会を紹介します。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~jea/

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