特定非営利活動法人 標準医療情報センター

先端医療検査(脳MR検査)

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脳梗塞イメージ  脳梗塞は細い動脈が原因となるラクナ梗塞、動脈硬化により血管が細くなりそこに血栓がつまるアテローム血栓性脳梗塞、心臓から血栓が飛んで脳の動脈を詰めてしまう心原性脳塞栓、その他に分類されます。それぞれ病態が違い治療法も異なります。

長嶋監督の脳梗塞は心原性脳塞栓による脳梗塞です。これは心房細動が原因のことが多いのですが、心房細動とは脈が一分間に200回くらい打って動悸がするものです。脳梗塞は発症から4時間半以内(2009年のガイドラインでは3時間以内となっていますが、2013年2月に厚労省が保険診療上の適応を4時間半以内と変更しましたので、ここでは4時間半以内としました)であれば、組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)を静脈注射し血栓を溶かす血栓溶解療法ができ、治療効果も確認されています(グレードA:強く勧める)。ただし、治療を4時間半以内に開始しなければいけないので、病院にはもっと早く着いていなければなりません。CTスキャンやMRIで梗塞所見がまだ出ていないか軽度の場合や、採血結果を確認する必要があるので、実際にt-PA静注ができる患者さんはそれほど多くありません。この頻度を上げるためにt-PAのできる病院を指定し、救急隊の訓練を行うなど、自治体も力を入れています。

○ 脳梗塞急性期

 脳梗塞を発症したら一刻も早くt-PAの治療ができる病院にたどり着くことが回復の決め手になります。次のような症状がでたら、救急隊に伝えればt-PAのできる病院へ運んでくれます。顔の麻痺、腕の麻痺、言葉の障害の3つが救急隊員が脳卒中を見分ける尺度にしている症状です。『顔(Face)・腕(Arm)・言葉(Speech)・時間(Time)』ですぐ受診 (ACT FAST)と覚えておいてください。

ここではまずグレードA、Bを示します。

I まず詰まった血栓を溶かす治療をします。

発症から
4.5時間以内
1.血栓溶解療法(経静脈内投与)(グレードA:強く勧める)
発症から3時間以内でCTスキャンで梗塞所見がまだ出ていない場合に組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)を静脈注射し血栓を溶かす。

t-PAによる治療は2005年10月より保険適応が認可されました。
しかし、発症3時間以内に病院で治療開始できる例は少なく全体の2-3%でしかありません。また3時間以内であっても患者さんの状態で実施できないことも多くあります。2009年のガイドラインでは3時間以内となっていますが、2013年2月に厚労省が保険診療上の適応を4時間半以内と変更しましたので、現在は4時間半以内であれば治療を開始しています。副作用は脳出血の危険があることです。
6時間
以内
2.血栓溶解療法(経動脈的投与)(グレードB:やった方が良い)
中大脳動脈塞栓性閉塞では、発症から6時間以内に治療が開始でき、CTで梗塞所見がまだ認められない例で詰まった脳血管にカテーテルを入れウロキナーゼ等による血栓溶解を行う。 最近ではウロキナーゼで溶かすだけでなく、バルーンで血栓を破壊したり、新しいデバイスで血栓を回収する方法も行われています。ガイドラインではまだ触れられていません。
48時間
以内
3.抗凝固療法(グレードB:やった方が良い)
発症48時間以内の脳梗塞には、アルガトロバン(薬品名ノバスタン、スロンノン)投与が推奨される。脳血栓症に特に有効である。
4.抗血小板療法(グレードA:強く勧める)
アスピリン160-300mgの経口投与は発症48時間以内の脳梗塞の治療法として薦められる。
5日
以内
5.抗血小板療法(グレードB:やった方が良い)
オザクレルナトリウム(薬品名カタクロット、キサンボン)は発症5日以内の脳血栓症の症状を改善させる。

II 血栓が溶けないで脳梗塞ができてしまうと脳に水がたまってきて(脳浮腫)脳が腫れてきます。また梗塞周囲の脳はまだ生きていてその部分を救わなければなりません。そのためには以下のことが勧められます。

(グレードA:強く勧める)
1.開頭外減圧療法
一側大脳半球梗塞で18-60歳、NIHSSが15点以上(重症例)、意識障害があり、発症48時間以内の例では手術で頭蓋骨をはずす開頭外減圧療法が有効である。
(グレードB:やったほうが良い)
1.脳浮腫管理
高張グリセロール静脈内投与
2.脳保護薬
24時間以内のエダラボン(薬品名ラジカット)投与は推奨される。

グレードC1(やっても良い) 一般的に行われています。
・ウロキナーゼ6万単位の5日間連続静脈注射
これは日本で一般的に行っている治療法ですがt-PAのように劇的改善が見られることはほとんどなく、症状が少し改善するかもしれないというレベルです。
・発症48時間以内のヘパリン投与高圧酸素療法
・血液希釈療法
・低体温療法
・緊急頚動脈内膜剥離術、ステント留置術
・深部静脈血栓症、肺塞栓に対するヘパリン皮下注射

グレードC2(やらないほうがいい) 少し前まで使われていました。
グレードD(やってはいけない)
ステロイド(副腎皮質ホルモン)療法
フィブリノゲン低下療法(日本では行われていません)

心原性脳塞栓の場合
4.5時間以内であればt-PAを静注するか、6時間以内であれば経動脈的血栓溶解や、血栓回収デバイスを用いて脳血栓除去を行うことができますが、症状や検査結果によりできる場合とできない場合があります。

それ以上時間が過ぎた場合は血栓溶解はできないので、アスピリンの経口投与、エダラボン、グリセロール、アルガトロバンの静注で経過を観察し、意識障害が進行する場合は頭蓋骨をはずす手術が必要になる場合があります。

アテローム血栓性脳梗塞では
血栓溶解ができるチャンスは少なく、アスピリンの経口投与、エダラボン、グリセロール、アルガトロバン、オザクレルナトリウムの静注で経過を観察することになります。
グレードC1の治療がこれに適宜加わることになり、そこで少しずつ違ったものになります。

しかしガイドラインは時代に合わせてどんどん変わっていくものです。新しい治療法が開発されて脳梗塞の患者さんが大勢社会復帰できるようになってほしいと思います。

○ 一過性脳虚血発作(TIA)

 一過性脳虚血発作は、脳の循環障害により起こる一時的な神経症状を言います。24時間以内に症状が消えることが前提ですが、実際は発症1時間以内に症状が消えることが多いものです。症状がすぐに消えることで、たいしたこと無いと判断し、病院に行かない人もいます。しかしTIA発症後90日以内に脳梗塞を起こす可能性は15ないし20パーセントあり、そのうち48時間以内の発症は半数あります。一方TIAを疑った時点で速やかに治療を開始した場合、90日以内の大きな脳卒中発症率が2.1パーセントまで低下します。

(グレードA:強く勧める)
  1. TIAを疑えば可及的速やかに発症機序を確定し、脳梗塞発症予防のための治療を直ちに開始しなければならない。
  2. TIAの急性期(発症48時間以内)の再発防止には、アスピリン160-300mgの投与が推奨される。
  3. TIA脳梗塞発症予防には抗血小板療法が推奨され、日本ではアスピリン75-150mg/day、クロピドグレル75mg/day、シロスタゾール(グレードB)、チクロピジン(グレードB)が使用できる。必要に応じて高圧薬(ACE)、スタチンの投与も推奨される(グレードA)
  4. 心源性TIAの再発予防には、第一選択薬はワルファリンによる抗凝固療法である。
  5. 狭窄率70%以上の頚動脈病変によるTIAに対しては、頚動脈内膜剥離術(CEA)が推奨される。
  6. TIAおよび脳卒中発症予防に、禁煙が推奨される。

○ 脳梗塞慢性期

 脳梗塞の急性期治療が過ぎるとリハビリテーションと再発予防が主な目的になります。

危険因子の管理と再発予防

脳梗塞を起こした人が再発しないためや、症状を改善するための治療法

(グレードA:強く勧める)
1.脳卒中の予防で挙げた高血圧、糖尿病、高脂血症、心房細動、喫煙、大量の飲酒、無症候性脳梗塞のうち、高血圧の管理、少量飲酒、禁煙、心房細動に対するワルファリン使用がグレードAで予防効果が証明されています。高血圧は140/90未満とすることが推奨されています。
2.脳血栓性脳梗塞の再発予防には抗血小板薬の投与が推奨される。
動脈硬化で血管が細くなって脳梗塞になるものを脳血栓といいます。日本で使用する薬はアスピリンの75-150mg、クロピドグレル75mgがグレードAで、チクロピジンやシロスタゾールがグレードBで推奨されています。アスピリンは少量で、20%程度脳梗塞や心筋梗塞を予防します。
3.心源性脳塞栓の予防は抗血小板薬ではなく、抗凝固ワルファリンが第一選択である。
注:日本では「心房細動患者の心源性脳塞栓発生抑制」を適応症とした経口抗凝固薬「ダビガトラン(プラザキサ)」が2011年に「リバロキサバン(イグザレルト)」が2012年に発売されました。それぞれ日本人を含む臨床試験(RE-LY試験、J-ROCKET AF)が行われ、有効性が確認されています。どちらも2009年のガイドラインでは触れられていませんが、第一選択薬として使用している例もあります。
4.脳卒中後うつ状態に対しては抗うつ剤の投与が推奨される。
5.症候性頚動脈狭窄が70%以上の人は頚動脈内膜剥離術をしたほうが良い。
無症候性の場合と同じで軽い脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)を起こしていて頚動脈が狭窄している人には手術で動脈硬化を取り除くと(頚動脈内膜剥離術)再発が防げます。
6.脳梗塞慢性期のうつ状態に対して、抗うつ薬は使用したほうがよい。
(グレードB:やったほうが良い)
  1. 脳梗塞後遺症のうちめまいにはイプジラスト、認知障害にはニセルゴリンが有効である可能性がある。
  2. 嚥下造影検査(VF検査)あるいは水のみテストで誤嚥の可能性が高いと判断された場合、適切な食物摂取法および嚥下性肺炎の予防を考慮することが推奨される。
  3. 内頚動脈頚狭窄症において、頚動脈内膜剥離術(CEA)の危険因子を持つ症例に対して、頚動脈ステント留置術を行うことが薦められる。
    注:最近ではCEA手術の変わりにステント留置術を行うことが多くなっています。
  4. EC-ICバイパス手術
    脳梗塞、TIA再発予防の面から、症候性内頚動脈および中大脳動脈閉塞、狭窄症を対象とし、熟練した術者により施行される場合、脳の血流検査をして脳循環予備能が低下していることが証明された症例に限り、EC-ICバイパス術を考慮してよい。 EC-ICバイパス術は一時効果がないとされましたが、条件にあった症例に対し、熟練した術者が実施する場合は効果があることが日本で証明されました(JET study)。

(2014.3.19)

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