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【どんな病気】

変形性膝関節症

 変形性関節症は、「関節軟骨の変性・摩耗とその後の軟骨・骨の新生増殖、および二次性滑膜炎などに基づく進行性の変性関節疾患」と定義されます。つまり、まず何らかの原因で関節の軟骨が傷み、すり減ると、人間の体はそれを修復しようとします。でも正常な状態に修復することは出来ず、周囲の負担のかかっていない部位に異常軟骨や骨棘として増殖します。こうして関節の変形が進みます。こうした変化に伴い、関節内の滑膜という組織が炎症を起こし異常に増殖して、関節内に水が貯まります。

 関節の変形は、全身のどの関節にも発生し、加齢とともに発生頻度は増加します。しかし関節の変形があっても、特に体重のかからない関節では傷みなどの症状が全くない場合も多く、関節の変形に症状が伴った状態を「変形性関節症」と呼びます。体重がかかり酷使される機会が多い膝関節や股関節に発症しやすい傾向にあり、スポーツ選手や重労働者、中年以降の肥満女性などに多く発症します。日本では畳、布団という下肢の関節に負担がかかりやすい生活様式も関与していると考えられています。

臼蓋形成不全・変形性股関節症

 変形性関節症は、「一次性」と「二次性」に分けられます。一次性関節症とは、関節にもともと既存障害や形の異常がなく、加齢変化に体重や運動などの負荷がかかり発症するものです。一方、二次性関節症とは、骨折や靭帯・半月板損傷などの外傷や股関節の形態異常、化膿性関節炎、痛風、リウマチなどの病気の後に発症するものです。膝関節では「一次性」の割合が多く、中年以降の女性に多い病気です。股関節の場合日本では、先天性股関節脱臼や、関節の屋根の作りが足りない臼蓋形成不全という病態に基づく「二次性」の割合が多く、ほとんどが女性で、膝関節の場合よりも若い年齢で発症します。

 その他、変形性肩関節症、変形性指関節症も比較的多い病気です。指関節では一番先の関節の痛み、腫れ、変形が起こる「ヘバーデン結節」が多く、40歳過ぎの女性に多く発症します。

【どんな症状】

動作開始時に痛み 最も多い変形性膝関節症の場合、初期には歩きはじめや立ち上がり時など動作開始時に痛みを訴える例が多く、病期が進行するにしたがって動作中の痛みを訴えるようになります。つまり、階段の昇降とくに降りるときや、さらに平地歩行にも支障を生じるようになり、膝の曲げ伸ばしが制限され、正座やあぐらが困難になります。滑膜の炎症・増殖による滑膜炎が起こると関節に水がたまる「関節水腫」となり、腫脹・圧迫感を訴えます。さらに関節軟骨や半月板の変性・摩耗が進むと、関節を動かしたときに痛みを伴って異音が出ることがあります。

 太ももの筋肉すなわち「大腿四頭筋や大腿屈筋群」の筋力低下や、関節面の骨破壊が進むと、関節の不安定感を訴えます。日本人では大多数が関節の内側の変形が強いため、内反変形つまりO脚になります。

内反(O脚)変形

 変形性股関節症の場合も、初期には歩きはじめや立ち上がり時などに軽い痛みを感じる程度で、歩いていると軽快してきます。病期が進行するに従い動作中や歩行時に痛みが強く、関節の動きが悪くなり、正座やあぐら、和式トイレ、靴下の着脱や足の爪切りなどが困難になります。さらに安静時痛や、痛みや筋力低下による跛行が出るようになり、末期になると脚長差を生じます。

 指の一番先の関節が罹患する「ヘバーデン結節」では、発症初期の急性期には痛みと腫れが強く、徐々に関節の変形が進み慢性期になると、痛みが軽快または消失するのが特徴です。

【どんな診断・検査】

 膝関節は皮膚から近いので、痛みの場所や変形が分かりやすく、問診と視診・触診でだいたい診断がつきます。視診・触診で、関節の隙間の圧痛、動きの制限、腫れ、変形などを調べ、X線写真で診断します。

 X線所見の特徴として、次の様なものが挙げられます。

  1. 関節軟骨がすり減ることにより、関節の隙間が狭くなる。
  2. 関節の辺縁に、骨増殖による骨棘が出来る。
  3. 内側の軟骨のすり減りや骨破壊により、内反変形(O脚)が見られる。

 以上の所見により変形性膝関節症の診断はつきますが、さらに詳しく軟骨や半月板、靭帯の状態を調べるためにはMRI検査を行います。

 股関節は深い位置にあり体表より直接触れることが出来ないので、問診、視診・触診と、X線、CT、MRIなどの画像所見を総合して診断する必要があります。関節の腫れや圧痛は分かりにくい場合が多く、視診・触診では、跛行や脚長差、関節を動かしたときの痛みや可動域制限を参考にします。X線で診断がつきますが、さらに詳しい状態を知るには、CTやMRI検査を行います。

 変形性股関節症の進み具合、すなわち病期はX線所見により次のように定義されています。

前股関節症 臼蓋形成不全(股関節の屋根の部分の発育障害)があるが、骨硬化や関節の隙間の狭小化がない。
初期 臼蓋(股関節の骨盤側)の体重がかかる部分の骨硬化や、関節の隙間のわずかな狭小化がみられる。
進行期 関節の隙間が明らかに減り、骨頭や臼蓋の骨棘、骨のう胞(骨に穴があいた状態)を認める。
末期 関節の隙間がなくなり、著明な骨破壊や骨棘を認める。

【どんな治療法】

 残念ながら、摩耗した軟骨や変形した関節を元通りに再生する治療法はありません。変形性膝関節症では、痛みや症状を和らげ、それ以上病状を進行させないための保存療法が基本ですが、変形性股関節症では、症状が軽くても臼蓋形成不全の程度が強い場合には、進行して軟骨がすり減らないうちに手術を選択した方がよい場合もあります。

 保存療法には、次のようなものがあります。

1)日常生活上の
注意
長時間の歩行や階段昇降、正座など関節に負担のかかる動作をなるべく避け、歩行には杖を使用する。ハイヒールや、底の硬い靴は避け、なるべくクッションのあるスニーカーをはく。関節を冷やさないよう注意する。肥満者は減量を心がける。
2)運動療法 大腿四頭筋の強化大腿四頭筋などの太腿の筋肉や、股関節周囲筋の筋力強化を、関節に体重をかけない臥位や座位で行う。水中歩行も効果的である。
3)温熱療法 関節や筋肉の痛みを和らげ、血液の流れをよくする。ホットパックや極超短波のほか、温泉や家庭での入浴も効果的である。
4)薬物療法
  1. 関節内注射:関節軟骨の保護および修復作用、関節内の潤滑作用、および鎮痛作用のあるヒアルロン酸を使用する。現在、膝関節と肩関節に適応があり、その他の関節には保険適応となっていない。炎症症状の強い場合にはステロイド剤が効果的だが、副作用もあるため繰り返しの使用は避ける必要がある。
  2. 消炎鎮痛剤:痛みや炎症の強いときには効果的だが、関節を修復する効果はない。副作用もあるため、長期服用は避けなければならない。
  3. 外用薬:消炎鎮痛剤入りのパップ剤や、軟膏がある。副作用が少なく使いやすいが、皮膚が弱い場合には使用に注意する。
5)装具療法 内反(O脚)型の変形性膝関節症では、外側を楔状に高くした足底装具が有効である。膝関節の不安定性がある場合には、支柱やバンド付の膝装具が有用な場合がある。


主な手術療法には、次の3種類があります。

1)関節鏡視下手術 主に膝関節に対して行われ、関節内の洗浄、異常増殖した滑膜の切除や、変性・断裂した半月板の部分切除などを行う。比較的病期や症状の軽い例に効果がある。
2)各種の骨切り術 膝関節、股関節とも各種の骨切り術が行われる。ただし、関節軟骨が完全にすり減ってしまった場合には適応とはならない。
3)人工関節置換術 人工膝関節全置換術、人工股関節全置換術が一般的である。関節軟骨が完全にすり減り、高度に変形した関節に適応となる。除痛効果は絶大だが、人工関節のすり減りや弛みによる寿命があるため、60歳以下に対する適応は慎重に行うべきである。
人工膝関節置換術・股関節の骨切り術

【どんな予防】

変形性関節症は遺伝性の病気ではありませんが、なんらかの遺伝素因があると言われています。近親者に変形性関節症の患者がいたり、先天性股関節脱臼の既往があれば、整形外科を受診して調べてもらうとよいでしょう。初期のうちに見つかれば、進行を予防または遅らせることが可能です。

肥満

 肥満は、特に下肢の関節にとって大きな負担となるため、適切な食事療法と運動で体重を減少させることが大切です。激しい運動や重労働、重いものを持っての長歩きなど関節に負担がかかることは避ける必要があります。ジョギングやエアロビクスなども、正常な関節にとってはよい運動ですが、変形性関節症の人にとっては関節に大きな負担をかけることになります。臥位や座位での筋力強化運動や水中歩行・水泳が効果的です。ただし平泳ぎは、関節の大きな動きを伴うため負担が大きく好ましくありません。

 歩行時の痛みや跛行がある場合には杖を使いましょう。底の薄くて硬い靴は避け、なるべくクッション性のあるスニーカータイプのものを選んで下さい。また可能ならば、椅子、ベッドなど立ち座り動作の少なくてすむ洋式の生活が望ましいでしょう。


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