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 変形性股関節症は、関節軟骨の変性や摩耗に始まり、様々な関節変化が進行する病気です。軟骨の変性・摩耗は、人種、性別、加齢、肥満および遺伝などの素因下に、労働や運動、外傷などの力学的負荷が加わり発生します。さらに軟骨細胞の代謝障害が起き、軟骨の破壊が進行するとともに、滑膜炎が起きて関節に水がたまったり、骨破壊も進みます。この病気は放置すると、前股関節症→初期→進行期→末期へと進行し、それぞれの病期に応じた症状があらわれます。

変形性股関節症の病期分類(ステージ)
前股関節症
1)前股関節症
変形性股関節症初期
2)初期
変形性股関節症進行期
3)進行期
変形性股関節症末期
4)末期

 変形性股関節症には「一次性」と「二次性」があります。一次性股関節症は、原因が明らかでないものをいい、欧米ではほとんどがこのタイプです。二次性股関節症は、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全(股関節の屋根の作りが浅い)、外傷や感染症などに続発するものです。日本では、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全に起因する二次性股関節症がほとんどで、その大部分が女性です。

 治療は日常生活指導、理学療法、薬物治療などの保存的治療が優先しますが、たとえ症状が軽くても、明らかに進行が予想される場合には早期に手術を受けた方が望ましい場合もあります。臼蓋形成不全や股関節症の状態や進行の程度により、様々な手術法があります。

【保存的治療】

A. 日常生活上の注意
  1. 「股関節に無理な負担をかけない」
    日本式生活よりも、ベッド・いす・洋式トイレなどの洋式生活が望ましいといえます。激しい運動や、重労働・立ち仕事は避け、長歩きや、立ち座りの繰り返し動作もなるべく避けるべきです。走ること、階段昇降、椅子からの立ち上がりでは、体重の6~7倍の力が、さらに、床や低い位置からの立ち上がりでは、10倍の力が股関節にかかります。長時間の立位や正座など、股関節に圧迫をかける同一姿勢の保持も好ましくありません。また、ハイヒールや、底の硬い靴は避け、なるべくクッションのあるスニーカータイプの靴をはくようにして下さい。
  2. 杖の使用
    痛みや筋力低下、脚長差により跛行が出ます。歩行時痛や、跛行がある場合には杖を使うべきです。杖は、かばう脚の逆側につきます。歩行時には、骨盤を平行に保つために強い外転筋力が働き、それぞれの股関節にかかる力の大きさは体重の約3倍となります。杖をつくことにより、中殿筋(お尻の部分の、主に股関節を外に開く筋肉)にかかる力を減らし、その結果股関節にかかる力が減少します。例えば、歩行時に一本杖を用い、杖に15kgの荷重をかけた場合、患側股関節に加わる力の合計は体重とほぼ同じ、つまり杖を使わないときの1/3となり、非常に効果的です。
  3. 体重管理
    股関節の悪い患者さんは運動も制限されるので、なかなか痩せられないのが現状です。自己流のダイエットで痩せようとすると、既存の機能・能力を損ない、さらに精神的ストレスにもなるためよくありません。肥満の方は、栄養士の食事指導を受けて、しっかりしたカロリー計算に基づいた食事をとることをお勧めします。
B. 運動療法
  1. 理学療法室や自宅での筋力強化
    大腿四頭筋などの太腿の筋肉や、股関節周囲筋の筋力強化を、関節に体重をかけない臥位や座位で行う必要があります。自力トレーニングを主体とすべきで、スポーツジムにあるような器具を用いたトレーニングは、股関節症の患者さんにとっては、負担が大きすぎ関節や筋肉を痛めたり、軟骨をすり減らす場合があるので注意して下さい。
  2. プールでのトレーニング
    プールでのトレーニングは、股関節症の患者さんにとって理想的な方法といえます。ただし、夏でも冷たいプールは避け、スポーツジムやスイミングセンターの水温一定のプールで、それぞれ自分の関節の状態、筋力・体力に合わせて行うことが大切です。 プール内歩行は、浮力により股関節への負担が軽くなり、無理なく安全に筋肉が鍛えられます。水深は胸の高さが理想的で、胸に水圧がかかるので呼吸・循環機能も同時に鍛えられます。水泳は、クロールやビート板を使ってのゆっくりとしたバタ足を行って下さい。平泳ぎは、股関節の大きな動きを伴なうため、また股関節への抵抗が強く、さらに腰も痛め易いので、行うべきではありません。ただし、前~初期股関節症の患者さんなら、水に浮いているようなゆっくりとした平泳ぎならよいでしょう。
C. 温熱療法
関節や筋肉の痛みを和らげ、血液の流れをよくします。ホットパックや極超短波のほか、温泉や家庭での入浴も効果的です。
D. 薬物療法
  1. 消炎鎮痛剤
    除痛目的で使われますが、あくまで対症療法(除痛)で、原因療法(病気を治す)としての効果はありません。しかも、長期連用は胃腸障害や肝臓・腎臓障害などの副作用を引き起こす危険があり、また痛みがとれて無理をしてしまえば逆に股関節症を進行させてしまいます。あくまでも他の保存療法との併用・補助と考えて下さい。消炎鎮痛剤入りのパップ剤や軟膏は、副作用が少なく使いやすいですが、皮膚が弱い場合にはかぶれに注意して下さい。
  2. 各種のサプリメント
    グルコサミン、コンドロイチン硫酸などが、軟骨を再生するとして市販されています。かなり以前より臨床治験が行われていますが、その効果については今だ明らかではなく、医薬品としては認可されていません。服用する場合には、「疼痛の改善に役立つ可能性はあるが、軟骨の再生能については今後の研究待ち」ということを理解しておく必要があります。

【手術的治療法】

A. 筋解離術
 股関節周囲の筋肉を部分的に切り離し、緊張をとることにより、股関節にかかっている圧力を低減させる方法です。これにより、痛みが軽減し、関節が動きやすくなることが期待出来ます。前股関節症から初期に適応がありますが、関節自体の形が治るわけではないので、将来症状が再発する場合も多いといえます。
各種の骨切り術および臼蓋形成術
 臼蓋形成不全が原因の変形性股関節症に対し、その状態や程度により様々な骨切り術や臼蓋形成術が行われます。金属などの人工物を使わないで、自分の骨で股関節の足りない屋根(臼蓋)を作る方法です。よって、軟骨が完全に擦り減ってしまった末期股関節症には適応になりません。
代表的な術式には、次のようなものがあります。
  1. 棚形成術
    棚形成術 骨盤から板状の骨を採骨して、これを足りない臼蓋の部分に移植する方法です。臼蓋形成不全が軽い、前股関節症から初期の場合がよい適応で、比較的手術侵襲が少ない点が特徴です。
  2. 寛骨臼回転骨切り術
    寛骨臼回転骨切り術 臼蓋を含めた股関節周囲の骨(寛骨)を丸くくり抜き、回転移動させて足りない臼蓋を作る方法です。前股関節症から初期がよい適応で、正常に近い、軟骨のある臼蓋を作れる点が特徴です。
  3. キアリー骨盤骨切り術
    キアリー骨盤骨切り術 臼蓋の部分で骨盤を水平に切り、横にずらすことにより足りない臼蓋を作る方法です。前股関節症から進行期まで適応となりますが、骨盤が狭くなるので妊娠の可能性がある女性への適応は慎重に行う必要があります。
C. 人工股関節全置換術
人工股関節全置換術 軟骨が完全にすり減り、高度に変形した末期股関節症に対して行われます。除痛効果は高いですが、人工関節のすり減りや弛みによる寿命があるため、60歳以下に対する適応は慎重に行う必要があります。骨セメントを使うタイプ、スクリューで固定するタイプ、セメントもスクリューも使わないタイプがあり、骨の質などにより使い分けます。
D. 股関節固定術
 末期股関節症の、重労働に従事する比較的若年の男性で、膝・足関節、反対側の股関節、腰椎に異常がない場合に適応があります。痛みはとれますが、股関節が動かなくなるので日常生活上不自由な場合も多く、特に女性への適応は好ましくありません。

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